帰宅した散文

なまいきです。当然のようにつまらないです。

ふゆ

現実から逃避するために僕は幻想を描いて、気づけば知らない世界に迷い混んだまま実存を信じられなくなったことがある。真っ白の紙に「ぼくはとうめいだ」と書き殴って、理想的な透明人間になった。後ろにいる人たちは存在の時空間を明確にされない。僕たちは透明で、循環のなかに一切関与していない。貢献も、荷担も、全く無いのだ。小さな存在であることを意図しようとすると、途端に堅苦しくなってしまう。自分には見えない何かが目の前から攻撃しようとしていても、気付かないまま通り過ぎる。ダメージはない。ちょうど、水を短刀で斬りつけたように。感覚を理解した頃、僕は突然肌が色を取り戻したことに気付く。いつの間に来たのと遠い昔に待たせていた友達に笑われた。人生は複雑怪奇なもので、「ぼくはそんざいする」と告げていないのに、我に変えると当事者になっている。なるべく関わりたくはないなあ。
砂浜に絵を描いた。綺麗な魚達が同じように新鮮な海藻の中で「生」を探している。隣で鬼ごっこをして遊んでいた男の子達が、何人か走り去った。僕の残した方法は、跡形もなく消え去っている。残ったのは前と変わらない冷たい色の小さな砂粒のみ。
暑苦しい夏は嫌いだけど、凍り付く冬も嫌いだ。地面が乾いて、空気を淡白にしながら肌を血で覆っていく。痛いと叫べば冷凍庫の中で取り返しのつかないほど疲れきっている僕がいた。
「ざんこくだね」
「ざんこくだ」
遠くで風が笑いあっている。
言葉の意味も知らないくせに。